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転職は新天地行きの馬車ではない
日本では長く、終身雇用制が敷かれていたため転職が一般的になったのはごく最近です。そのためか、転職の意味をあまりよく分からずにキャリアダウンの転職を行ってしまう方が多く見受けられます。転職は本来、今の環境では実現できないことに取り組むために、前向きに行うものです。現状の不満を抜け出すためという後ろ向きな理由での転職は失敗しやすいと言えるでしょう。転職活動は新天地行きの馬車ではないのです。
評価への不満を理由とした転職は避けよう
評価への不満が理由で転職を検討している場合、転職してもまた同じように不満な評価しか得られない場合が多いです。そもそもあなたの評価はあなたが決めるものではなく、自身の力が及ばないため所与の条件に近い部分もあります。どうしても現在の評価がおかしいと感じる場合は、転職活動で内定を獲得した会社の条件を見てみましょう。大抵、現在より低い役職や給与が記載されているはずです。
転職失敗の実例
それでは、実際にあった転職の失敗例をご紹介します。当たり前の事ですが、転職自体は悪い事ではありません。より良い未来のために行動することは尊敬されるべき事でもあるでしょう。しかし、転職をした人全員が思い描いた通りの未来を勝ち取ることができた訳ではありません。これから転職を考えている方は、是非参考にしてみてください。
収入への不満から転職して失敗した例
「仕事にやりがいはあったものの少なすぎる収入が不満で実力主義のベンチャー企業へ転職。最初のうちは良かったものの、一度のミスから経営陣ににらまれ報酬が激減。給料泥棒と罵られ、居心地が悪い」 収入を上げる事を転職の目的としている場合、転職を検討する前に今の会社で収入を上げる事はできないか考えてみましょう。歩合給やインセンティブの制度があるのなら、まずはそちらを狙ってみて、ダメだったら転職を考えても遅くはないでしょう。
社風・制度に魅力を感じ入社したがギャップを感じた例
「仕事も遊びも一生懸命に取り組むことを打ち出す社風に魅力を感じ入社。仕事は楽ではなかったが働いた分だけ評価される点も気に入ったが、休日の社内イベントが多く常に会社のメンバーと過ごすことがこれほど苦痛だとは思わなかった」 仕事に打ち込みたいと考えている方でも、休日の遊びまで会社のメンバーと過ごす事に抵抗を感じてしまうかもしれません。一見魅力的に映る社風や制度ほど、実際のところどうなのか入念に確認しましょう。
ツテを使い転職したが仕事がしにくかった例
「新卒で入社した会社で何となく過ごすこと早3年。大学時代にお世話になった先輩から、ウチの会社に来ないかと誘われ転職を決意。ところが会社内では先輩の評判が悪く、自分まで仕事がやりにくい環境に置かれてしまった」 後輩や友人、知人をスカウトする形で採用する、縁故採用やリファラル採用と呼ばれる形態は近年増えており今後も増加が見込まれています。しかしこれにも注意が必要です。上に挙げた例のように、社内で孤立してしまった人が状況を打破するために知り合いを連れてくるケースや、縁故採用の人数にノルマが課されており達成するために止むを得ず体の良い事を言って転職を唆すケースもあります。直接の先輩や友人知人の紹介は安心しがちですが、100%鵜呑みにせず自分で調べる努力もしましょう。
やりがいを求めたら過労になってしまった例
「前職は誰でもできるような仕事しか割り振られず、退屈に感じ退社。裁量権が大きくやりがいの感じられる仕事へ転職したが連日の深夜残業。確かにやりがいはあるが、このままでは過労になってしまう」 楽でやりがいのある仕事は存在しません。やりがいを求める時点である程度のキツさは承知の上かと思いますが、キツいと感じる基準は人それぞれ異なります。また、ゆっくり仕事をこなす10時間勤務と目が回るような8時間勤務とでは、たとえ時間が短くとも圧倒的に後者のほうがキツいはずです。とはいえ、入社前に仕事のキツさを測ることは困難なので、具体的に何時間までならば耐えられるのかを明確にしておきましょう。仕事は続けることが大切です。過労で倒れてしまっては、再度転職を繰り返すことになってしまいます。
面接官との相性で判断し失敗した例
「前職での人間関係の悩みから転職を決意。あまり志望していない業界の面接に行ってみたら面接官と意気投合し、雰囲気も合うと感じたため入社したがいざ仕事を始めてみると価値観が合わなかった」 面接官1人との相性だけで会社を選んでしまうのは非常に危険です。社風は社長の考えに加え、何十人もの社員の人柄や個性が合わさり形成されます。たった一人の社員と気が合うからといって、その会社の社風が合うとは限りません。一方で、ひとりでも良いので全幅の信頼を寄せられる社員を作っておくことは非常に大切です。どんなに社風が合っていても、個人レベルで何でも相談することのできる先輩がいないのは辛いものです。「この人ならば何でも隠さずに話せる」」という相手を会社の中に作っておくと、困った時の強い味方となるはずです。
働くツールを重視し失敗した例
「大学時代に留学経験がありTOEICは800点オーバー。英語を使って仕事をしたいと考え外資コンサルに就職したが、実際は英語を使う機会がほとんど無かったため転職を決意。中堅商社の海外駐在員として採用され、英語を使った仕事はできるようになったが業務内容が事務的で不満」 仕事の内容ではなく仕事を行う手段やツールに拘ってしまうと失敗しやすくなります。特に英語の場合、簿記やプログラミングといった他の資格に比べ英語そのものが仕事という事はほぼ無く、英語というツールを使って仕事をしていくに過ぎません。英語が使える仕事というざっくりとした選び方では業務内容に不満を感じてしまう結果になるかもしれません。
ワークライフバランスを重視し過ぎた例
「前職は数字が全てという激しい環境で、心身ともに疲弊し転職。現在はワークライフバランスが取れた穏やかな社風であるものの、以前の同僚や他社で働く友人に市場価値で負けるのではないかと心配になる」 成長とワークライフバランスというと、二律背反の関係にあるとされるのが一般的です。自分はどちらを重視したいのか、またある程度は両立する方法がないのか探る努力が必要です。